Living Research

Vertical Farming – 垂直農法の未来

with Dickson Despommier (コロンビア大学教授)

profile

Dickson Despommier (コロンビア大学教授)

ニューヨーク アメリカ

Dickson Despommier(ディクソン・デポミエ)氏はコロンビア大学教授として38年間微生物学と環境衛生学公衆衛生分野を教える。同大学で最優秀教員賞を6回、2003年には米国医学生協会のゴールデン・アップル賞を受賞。1999年に自身の医療生態学の講義にて大学院生と環境と人間の健康の相互作用についての研究の中で”Vertical Farming”(垂直農法)という概念を提唱。

Dickson Despommier (コロンビア大学教授)

Vertical Farming - 垂直農法の未来

“Vertical Farming”という言葉は1915年にGilbert Ellis Baileyによる著書「Vertical Farming」において造られた言葉で、当時彼が意味したものは現代のそれとは異なり、彼は土壌の起源という観点から農業について記しており、土が含有する栄養素や土の下にのばす根の構造などに興味を持ち、植物を”垂直な”生命体と捉えた。

現代の”Vertical Farming”は都市型農業のひとつとして述べられる室内で行われる外部環境に左右されない”垂直に”重ねられた食品製造構造を指し、基本的に土を必要としない水耕栽培を利用した垂直・多段式の栽培システムで、太陽光を利用するものや人工光、LEDを用いるものもある。植物工場や高層ビルを利用した農場はこの垂直農法を用いている。

ディクソン博士による近代的なアイデアの垂直農法とは、栽培空間を最大化するため都市空間を農地として有効活用し、人口増加に伴う食料需要増加や気候変動など、社会問題、環境問題に対応するための概念である。それは輸送コスト、カーボンフットプリント、水の使用量全てを削減する持続可能なエコ・シティで何とも夢物語的だが、彼の提唱した概念から、様々な建築家やデザイナーが都市部での高層ビルを農地として利用し都市での生産消費を可能にする構想を打ち出している。超高層ビルにみる近未来的な建築群は理論的に可能かもしれないがあまり現実的に見えず、高い建設コスト、エネルギー収支なども明確にされておらず、実際に世論は賛否両論である。
そこで概念の提唱者であるディクソン・デポミエ博士に伺った。

 

"Vertical Farmingの概念の本質は、ファンシーな建物によるものではありません"

ディクソン:垂直農法は全ての地方都市の景観に適応すると思いますが、超高層ビルは不適合だと思います。それは非効率的であるし、10階以下が理想でしょう。光を取り込むための窓が必要だと思っていましたが、効率的なLEDの進歩により私のオリジナルのアイデアは変わったといえます。

農作物の進化をテクノロジーでコントロール、管理することは可能でしょうが、それはファンシーな建物によってではありません。農家はこれまで最小限の空間を使って、最大限の収穫を得ていました。室内農業を行うにしてもそのシンプルなルールに従うべきでしょう。

都市型垂直農業は、水の使用量の削減、LEDによる高効率性、そして垂直農場がマーケットのすぐそばにあるため輸送コストも削減でき、食べ物を腐らすこともないという点でサステナブルだと考えます。食料の生産は都市の中で行われるべきです。地域のサービスが全て統合された、快適なエコシティを描いており、エコシティはそのほとんどが自給自足となります。これは自然の風景の再び農地としての自然との関係を復活させるでしょう。
自然とテクノロジーをうまく共存させるには、自然に干渉しすぎないことが重要だと思っています。

 

Interview & Text : Marika Nakada (EUGENE KANGAWA STUDIO)