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自律型ドローンが映す未来の産業と人間のあり方 

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エアロセンス株式会社

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エアロセンスは2015年8月、ソニーモバイルコミュニケーションズとロボット技術を開発するスタートアップ「ZMP」が共同で設立したドローンベンチャー。「Robot of Everything」というヴィジョンの下、生活の中にロボットを活用して人間の生活をより豊かにしていくための研究開発を中心に行う。

エアロセンス株式会社

"農業でもドローンが流通の主流になった時、今までの産業構造は少なからず変わると思います。"

- これまで様々な産業領域でのロボットの開発をされていますが、具体的にドローンを導入することで、農作業にどのような変化をもたらすことが可能なのでしょうか?

エアロセンス :  自動運転の技術とイメージングセンサーや画像認識技術を使って、例えば作物の発育状況、穂の長さや水が十分に行き届いているのかなど様々な情報をセンシングすることができます。従来の農業では肥料を一律的に散布し収穫も一度に行うため、一律に栄養素が含まれているわけではない土地に肥料を与え過ぎるところもあれば不足しているポイントも存在し、発育状況次第ではまだ収穫するべきではない農作物も存在しましたが、そういった部分をセンシングで場所を特定し追肥するなど適切な場所に肥料をまくことが可能になり、過不足なく肥料が与えられて結果的に収穫の効率もアップするでしょう。また、利用者の負担を可能な限り軽減するため、メンテナンスの簡素化と自動的に飛行可能なものを現在開発しています。

- ドローンはロジスティクスの面でも大きな役割を担うことができると思いますが、その点はいかがでしょうか?

エアロセンス : 現在、本国内では生産者から消費者までの間に農協や卸売市場、小売店など様々な要因を仲介するため、どうしても距離がありますが、他の産業ではオンラインショッピングによって誰もが直接生産者にアクセスしてモノを買えるようになりました。

今後、農業においてもドローンが流通の主流になった時、今までの産業構造は少なからず変わっていくと思います。もちろん個人的な宅配も実現していく可能性はありますが、生産者から直接というよりは宅配ステーションのような機関を経由する方が効率的かと考えます。

国外での問題になりますが、例えばフードデザートと呼ばれる郊外に住む人々が移動手段を持てないために、新鮮で栄養価の高い食品を入手できないという現象が最近では問題になっていますが、ドローンはこうした問題の解決策にもなりうるでしょう。

"果たしてドローンというものを誰もが所有していいのか?"

- 現在、国内外で数多くの企業がドローン産業に参入しています。例えば、2014年アメリカでは米連邦航空局(FAA)では48社、カナダ運輸省では1,672社へドローンの商業利用を認可しました。こうした情勢の中で、日本のドローン産業は今後どのようなものになるでしょうか?

エアロセンス :まず、今後考えられるドローン産業の在り方には2通りがあると考えていて、一つは自動車産業のようにドローンを作るメーカーとそれを使ってサービスを展開するメーカーが分離する水平分業型の構造、もう一つはエアロセンスのように独自に開発したドローンを自社内で使用しサービスを展開する垂直統合型の構造です。

この議論は産業の在り方、規制の話にも関係してきます。自動車事故が無くならないのと同様に、空を飛ぶものは当然落ちる可能性があるため第三者に被害が及ぶ可能性はどんなに技術が発達しても除けません。そこから「果たしてドローンというものを誰もが所有していいのか」という議論が生まれます。そして我々はそうあるべきではないと思っています。オペレーションのリスクをしっかりと認識し、誤った操縦をさせない体制をきちんと整備した企業が第三者に被害を及ぼさないために限定的にドローンを取り扱うべきであると考えています。

また、現在では様々な企業、研究施設などがドローンの開発に注力をしていますが、今後は副業的に実験を行っているチームは淘汰され、技術も数カ所に集約されていくと思います。

垂直統合型とそれの対極にある水平分業型のどちらがビジネスモデルとして生き残っていくのかはまだわかりませんが、自分たちであらゆるリスクを考え且つユーザーの目的にかなったシステムを作り提供するという意味で、私たちは業界の黎明期においてはパイオニア的存在であると考えています。ドローンの全てを理解した専門家がマネージメントを行う組織だからこそ、今後の市場を作っていくことができると考えています。

ドローン産業におけるイノベーションのスピードは非常に速く、法的な整備も十分になされていないため、大企業はリスクの面からも十分に参入することは依然として難しい状況にありますが、エアロセンスは親会社が大企業で資本金、技術的なバックアップを持ちつつ、ベンチャーとして果敢に挑戦していくというハイブリット型の組織体制になっているので、新しい分野への挑戦と安定性という意味ではとてもバランスが取れていると思います。

- ドローン産業の今後の重要な課題としては、ドローンが収集したデータを蓄積、分析をするビッグデータの質が重要な課題の一つになると思いますが、その点はどのような展望をお持ちですか?

エアロセンス : ビッグデータというのは蓄積が物を言う世界なので、エアロセンスのような垂直統合型プレイヤーは常にアドバンテージを持っていると言えるかもしれません。なぜなら、ドローンの開発からシステム構築、運営を異なる企業が行うことによってそれだけロスが発生するとも考えられます。

ドローンはセンシングによって現状を分析するだけでなく、農家の方々が長年蓄積してきた暗黙知などのノウハウや気候と農作物の成長の関係性のデータなどを蓄積、解析することで生産者に再度還元することも可能になります。

また、誰でも効率的に農業を行うことを可能にするという意味でも、農業にビッグデータを導入することはとても重要だと考えていて、さらに生産者だけでなく、消費者にも新しい質の情報を提供することが可能だとも考えいます。

例えばこれまでは不透明だった食物が生まれるまでのプロセスをドローンを通じて可視化することで、食の安全性を高めることができます。野菜が作られるまでの過程や牛や豚などの日々の様子など、生産者が成長の様子を公開するというのもドローンならではの特徴です。これは建築業界でも応用されており、住宅を建てる際に施工の進捗をドローンで家主の方々に提供するサービスが存在しています。こうした利用方法も様々な業界での汎用性があると思います。

"ロボットは…人間の仕事をより創造的なものへと純度を高めてくれるでしょう。"

- そういうことを含めて、エアロセンスとしてのドローンの最終的なビジョン、ドローンが浸透した世界はどのようなものになるのでしょうか?

エアロセンス : 農業に関してお話をすれば、ドローンの普及によって生産者の日々の作業が効率化されるだけでなく、作物の付加価値が高まると同時に、消費者には安心を持ってその食材を買ってもらうことができるような産業が実現されると信じています。

農家の人がそれぞれウェブサイトのようなものを持っていて、そこでは毎日農作物の成長の過程が映し出されている。そして収穫の時期を迎えれば、クリック一つでドローンが届けてくれるような未来です。
社会全体で考えるのであれば、個人的にはドローンは人間の活動範囲を広めることができる手段だと考えます。当然人間というのは地上で生きているため移動の制約があります。しかし、ドローンがあることで空を通じて人間が関与できるレベルが飛躍するので、それが結果的に今までになかったような経済活動のボリュームを作り出すことが可能になります。
例えばアメリカ人が西へと開拓して人間の活動範囲と経済活動が拡大していったように、今後は地上、空、海中そして宇宙を開拓し様々な領域でさらなる発展が可能になると考えています。さらに、人間の活動領域を広げつつも、様々な意味で効率化を実現していきます。

これはエネルギーや資材に関わる話でもあれば、より抽象的な概念でもあります。これまでの経済活動は大量生産と大量消費の繰り返しによって支えられてきましたが、今後ロボットが本来的に人間がやるべきではなかった仕事を代替することで、サービスにお金が回り持続的な成長、人類の持続的な営みが促進されるのではないかと思っています。
一般的に、ロボットは人間の仕事を奪うのではないかと危惧されていますが、私は逆に一人一人の生活が豊かになると考えています。ロボットを介すことにより、個人があらゆる知識を得て行動を起こし、人間の仕事をより創造的なものへと純度を高めてくれるでしょう。そして人類の英知を極めていくことができるのではないでしょうか。

Interview & Text : Yusuke Nishimoto (EUGENE KANGAWA STUDIO)