Living Research

自然とのつながりを再構築する生きた建築

with Tsai Design Studio

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Tsai Design Studio

ケープタウン 南アフリカ

建築家Y Tsai率いるTsai Design Studioは、南アフリカのケープタウンに拠点を構える建築・インテリア・デザイン事務所。大グローバル・サウスの文脈において文化的・社会的関連性に対する強いセンスを特徴に、型破りで挑発的なデザインソリューションを生み出している。

数々の賞を受賞し、彼らの作品であるNested Bunk Beds"The Most Beautiful Object in South Africa"賞、国際レッドドット賞を受賞。Tsai2008年英国文化振興会による国際ヤングデザインアントレプレナーアワード準グランプリを獲得、2013年、ケープタウンで行われるオープンデザインフェスティバルのクリエイティブディレクターに選出。2014年、フランスで行われた国際"Young Architects in Africa"コンペティションにて選外佳作賞を受賞。ヴェネチアビエンナーレ建築展で展示された。

Tsai Design Studio

"建築と自然がいかに子供たちに素晴しい経験をもたらせるかということに関して強い興味を持っています。"

- Moyo Soukプロジェクトにおけるあなたの問題意識やモチベーションについて聞かせて下さい。

Tsai:Moyo Soukはケープタウンの中でも最も栄えた観光地であるV&Aウォーターフロントにフードマーケットを開くため、アフリカをテーマにレストランを飾り付けてほしいという要望から始まりました。面白いことに私は中国人、アジア人としてアフリカンレストランを”飾り付け”することになったのです。私たちはこの機会に、世界的な問題をテーマにしようと考え、食の安全保障をテーマに取り組みました。食料安全保障は、アフリカ大陸における主要な問題で、豊かな土地はあっても食料資源を管理するための技術と知識が欠如しています。このプロジェクトは、私たちに創造的な解決策を模索し、責任を持って食べ物を扱うためにレストランを支援する機会を与えました。

農地、市場を併設するレストランをデザインすることで、食物を育てることから始まり、準備、調理、料理として消費され、商品として取引され、最後に有機廃棄物として肥料になるまでの食物サイクルの物語を伝えようとしました。

目的を達成するため私たちは2の戦略を用いており、1つは太陽光パネルとアクアポニックスなどの家の裏にあるような自然的な設備を隠すのではなく、それらを建築材料として用い、美しさとしてみせることです。2つ目は、訪れた人が何かを学べる場を提供するために材料、素材や建設プロセスに忠実になることです。

農業と建築を融合し、訪れる方々、特に子供たちが農業技術の可能性や緑溢れるソリューション、建築構造を理解できるような教育的体験を設計しました。教育の観点からこのプロジェクトは大成功だったといえます。たくさんのパイプと色と、アクアポニックスを用いた魚の泳いでいる水槽など子供たちはとても興味を示してくれ、実際に学校の先生や家族連れなど子供を連れてきたりツアーガイドなどもありました。さらにMoyo Soukは、地域の市職員、デザイナーや農家の間で食糧資源のこれから、都市農業の可能性について対話を生み出しました。

- 食と人間の周りの状況をデザインすることについてどう思いますか?

Tsai:私たちのプロジェクトにおいて一番最初に考えることは人です。Moyo Soukは都市農業と食に焦点を当てましたが、常に中心にあるものは人です。建築、教育あるいはスポーツがテーマだとしてもその建築を利用するのは人であり、人のために設計されるべきです。

自分のスタジオを始めたとき、私は社会的な影響を与えることができるプロジェクトを手がけることを決めました。資源や予算が限られているプロジェクトに取り組むことは私たちを革新的なアイデアへと導きましたが、中でも成功したプロジェクトの一つは、Nested Bunk Bedsという、非白人居住地域の小屋の小さな空間のために設計した省スペースベッドシステムでした。

現在私たちは南アフリカにある孤児院にこれらのベッドを導入するNPO(非営利団体)を始めるため取り組んでおり、このプロジェクトは複数の賞を受賞しました。このプロジェクトは、私たちが向かっている方向を再確認し、それ以来振り返ることなく前進し続けています。

- 今後どのような未来をつくりたいですか?人間と自然の理想的な関係は何ですか?

Tsai:自然は信じられないほど素晴らしいものだと思いますし、都市化が起ころうとも自然はレンガや舗装の間から芽を出す非常にたくましい存在です。例えば食品の多くはすでに遺伝組み換えされていて、それは大きすぎるトマトや種のない果物で明らかですが、この自然への干渉の裏側には、自然による予測不可能な復讐があると思っています。
南アフリカでは土地も自然もほとんど人間の手が加えられてないため、あまり人間と自然の関係について考えたことがありませんでしたが、建築と自然がいかに子供たちに素晴しい経験をもたらせるかということに関しては強い興味を持っています。

南アフリカにおける犯罪率は非常に高く、子供たちの安全のため都市の遊び場の多くは使用されていないのです。私たちのプロジェクトの大半は子供たちに関わるものでもあるので、子供たちが安全に遊べる緑溢れる公園や遊び場のある、都市としての南アフリカの未来を見たいです。

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All images courtesy of Tsai Design Studio

"建築を生命体として捉えられるならば、可能性は無限でしょう。"

- 建築の可能性についてどう考えますか?

Tsai:一般的に建築は人々を守るために作られますが、インターネットや現代技術が私たちの生活を変えたように、建物と空間によって人々の行動や生活に変化を生み出すことができると信じて取り組んでいます。建築は恒久的に何かを収容する建物というより人々の行動を誘発するためのツールだと考えています。

- コミュニティと建築におけるあなたのビジョンから、将来人々がどのように食事と農業に関わっていくと考えますか?

Tsai:未来の食料需要を満たすために農業を含めて、創造的な解決策が必要となるでしょう。
例えば、もし農業が農地を必要としなくなったら?ケープタウンのシティーセンターにある高層ビルの屋上で都市型農場や太陽光発電農場を行うプロジェクトなどありましたが、成功すれば高層ビルで発電も新鮮な生産も独自に行えるでしょう。
さらに予測していることは建築に生体工学要素を組み込むことです。もし建築を生命体として捉えられるならば、可能性は無限でしょう。私たちは既に高層の建物のファサードに垂直農場を組み込むことができますが、もし藻類による光などを建物を照らす代替手段として提供できたら?つまり、可能性は確かにあり、ただこれらの先端的なアイデアを実際に押し進めていく先駆者が必要でしょう。建築家としてこういったアイデアを建築に落とし込めるよう探求し続けたいです。

- 建築を生命体として捉えるならば、建物のかたちは変化していくと考えますか?

Tsai:変化していくでしょう。例えば現在私たちは衣服を育てることも建築材料を3Dプリントすることも、植物からエネルギーを取り込むこともできるのです。これらの技術における大きな突破口が一度開ければ、建築家はそれらを用いた革新的な利用法を見つけ出していけると思っています。

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All images courtesy of Tsai Design Studio

Interview & Text : Marika Nakada (EUGENE KANGAWA STUDIO)